印鑑は仕事で押す

不動産屋のカウンターにある飴をあけながら、アルバイトを続けていて良かったと初めて思った。
毎日毎日繰り返される会社とバイト仲間と社員さんの愚痴の間に挟まれる日々でしかなかった。
いつからか、社員になれたらひとり暮らしをしようと決めていた。

そして、良いことは続き、すすめられた物件を見に行き、狭くても少しレトロ感があり、
家賃が驚くほど安く駅が近いという条件にすべて合致していた。
これは本日中に決めなければいけないと思った。
せっかくいい流れがきてるのだ。

物静かな雰囲気しかない担当者に契約の意思を伝えると落ち着いた笑顔で
「有難うございます。いいご判断だと私も思います。」と言われた。
揃える書類の中に在職証明書があった。
会社に言ってもらわなければならない。

次の日、私は、すぐに書類をそろえるため店から会社に電話し、意向を伝えた。
郵送で届くまでの何日間か、またもや愚痴の中で過ごした。
お客さんがいない店内は愚痴しかない。
BGMは耳にタコができるほどで、愚痴の方が耳に心地よいから不思議だ。
今日も疲れた。

聞き飽きた声の中で、社員だという自覚からか一層の笑顔で聞き役に徹する。
この笑顔があったから一人暮らしができるのだ。
今日も無意識に印鑑を押したような毎日を暮していた。
我慢も大事。
笑顔も大事。

そんな中本部から郵送で封筒が届く。
在職証明書だ。
中身を確認の為みる。
代表印をみて笑顔になった。
幸せだなと感じた。
社名が記された刻印はおしゃれな字体でかかれていた。
一見唐草模様のような、いや、北欧の壁紙のような模様にも見えた。
私は社員として、この会社を誇りに思うような働き方をしていこう。
そう決意した。

*このサイトは現在準備中です